胃腫瘍(ポリープ、がん、粘膜下腫瘍)
胃腫瘍で一番問題なるのは胃がんですが、その他にも良性の胃ポリープ(胃底腺ポリープ、過形成ポリープ)や粘膜下腫瘍、神経内分泌腫瘍(NET)などもよく遭遇します。
胃ポリープとは
胃ポリープの多くは胃の粘膜と同じ色調で光沢がある胃底腺ポリープであり、特にピロリ菌未感染の方に多発して見られることがあります。こちらのポリープに関してはがん発生例の報告もありますが極めてまれなケースであり、大腸のポリープとは異なり基本的に治療の必要はありません。
一方発赤調でピロリ菌感染歴のある方によくみられるポリープは過形成ポリープといいます。こちらは除菌治療で消失することもあります、基本的には良性で治療の必要はありませんが、大きさが大きいものや増大傾向のものはがん化の可能性が否定できませんので内視鏡的治療の適応と考えます。
胃がんとは
胃がんの最大のリスクファクターはピロリ菌感染と考えられており、かつては日本人のがんの中で1位でしたが、ピロリ菌感染率の低下から現在は減少傾向にあります。早期癌の段階であれば内視鏡治療で治療できる可能性がありますが、進行癌の段階ですと外科手術が必要です。
早期癌の場合は基本的に無症状であるため、ピロリ菌感染歴のある方は胃がんのハイリスクであるため定期的な胃カメラを推奨します。進行癌になってきますと胃痛や食欲不振、貧血、吐血や黒色便といった症状があらわれてきます。
ピロリ感染歴のない方が近年はほとんどであり、胃がんのリスクは低いと考えられますが、最近の研究により、ピロリ菌未感染の方でも特殊なタイプの胃癌が生じることが報告されており注意が必要です。
胃粘膜下腫瘍とは
粘膜下腫瘍とは粘膜の表面から発生した腫瘍ではなく、粘膜より深い層に腫瘍の主体がある腫瘍のことです。内視鏡で見ると通常の粘膜に覆われた状態で塊のようなものが見て取れます。胃の場合は食道と異なり肝臓などの臓器が外から圧排してそのように見えることがあり、正確な診断には超音波を用いた超音波内視鏡検査やCT検査が必要なことがあります。治療適応かどうかはその正体を診断する必要があり、表面から発生する胃がんであれば表面の細胞を採取する組織検査で診断がつきますが、粘膜下腫瘍は深い層にあるため、組織検査では診断がつかず、特殊な装置を用いて針を刺して深いところにある粘膜下腫瘍の細胞を採取するFNAという方法が必要となり、一般的には入院が必要な検査となります。粘膜下腫瘍自体は頻度が多いため、小さいものは基本的に経過観察となりますが、大きさが増大傾向のものや、大きいものは精密検査の適応となりますため、専門施設にご紹介させていただきます。
胃腫瘍(ポリープ、がん、粘膜下腫瘍)の症状
基本的に胃ポリープや早期のがんや粘膜下腫瘍は無症状であり、健診などで偶発的に指摘されます。
胃がんが進行して進行胃がんとなり潰瘍状態になれば胃の痛みや食欲不振、体重減少といった症状が出現します。自然出血に伴い貧血となれば息切れ、易疲労感、体動困難、ふらつき、失神など貧血に伴う症状が出現します。巨大化した胃ポリープや粘膜下腫瘍も腫瘍からの出血により同様に貧血症状を呈することもあります。またできる部位によっては進行胃がんが胃の出口の幽門を塞ぐことで食事が通らなくなり、食事摂取困難や腹部膨満といった症状が起きることもあります。
胃腫瘍(ポリープ、がん、粘膜下腫瘍)の検査
胃腫瘍を診断するには胃カメラの検査が重要になります。特に早期がんは無症状であるため、特にピロリ菌感染歴のある方は胃がんのハイリスクですので定期的な胃カメラの検査が重要になります。ピロリ菌除菌後であっても胃がんにかからないことはなく、リスクは減るものの、未感染の方と比較してハイリスクですので定期的な検査を強く勧めます。
当院の胃カメラ検査の特徴は、①スムーズな予約から検査の体制、②徹底した鎮静剤の調節による苦痛の除去、③AI技術による最新の検査設備の3点を考えています。
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胃腫瘍(ポリープ、がん、粘膜下腫瘍)の治療
胃ポリープに関しては基本的には治療が必要ありません。大腸ポリープと違いがん化のリスクが低いためです。特に光沢のある胃底腺ポリープは基本的に治療不要です。一方発赤調の過形成ポリープはピロリ菌の除菌により消失することも多いので、まずは除菌で経過を見ることになります。大き目のポリープは除菌で消失しないことがあり、増大傾向のポリープも出血やがん化の懸念があることからその際は切除を勧めます。当院で胃ポリープの切除もすることは可能ですので是非ご相談ください。
胃がんに関しては早期段階で発見することができたらまずは内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の適応になります。こちらに関しては入院施設での治療を推奨しますが、院長もこちらの治療を専門としていますためご相談ください。しかし、早期がんであっても内視鏡で治すことができるかどうかはがんの種類・大きさ・深さによって細かく基準があります、いずれにせよ切除しないとそちらは正確に判定できません。基準から外れた際は早期がんであっても胃の外のリンパ節に転移している可能性があることから追加で外科手術の適応となります。進行がんに関しては外科手術の適応となりますため専門施設にご紹介させていただきます。
粘膜下腫瘍に関しては経過観察が必要です。比較的よく遭遇する病変で、多くの方が10mm以内の小さいものですが、増大傾向であったりするとGISTという悪性の病変の可能性があるので精密検査が必要です。粘膜下腫瘍は深部に腫瘍の主体があるため表面を組織検査しても診断がつかず、超音波のついた内視鏡を用いて、腫瘍に針を刺して細胞を摂取するFNAという方法が必要で、その際は入院での精査となるため専門医にご紹介させていただきます。GISTの診断がついた際は治療の適応となり、内視鏡と外科の合同手術や外科治療の適応となります。